未来に向かって伸びやかに進んで
――あなたを支える「若草プロジェクト」

  • #その他

家庭のこと、お金のこと、恋人のこと……さまざまな要因で生きづらさがある女性は、決して少なくありません。頼れる先や居場所がないと、自宅を飛び出し街をさまよったり、怪しげな仕事に引き込まれたりしてしまうこともあります。一般社団法人「若草プロジェクト」(https://www.wakakusa.jp.net/)は、困りごとを抱える女性たちを支えるために有志の専門家らが集まり立ち上げました。以来、リアルでの対面支援とSNSなどを利用したネットでのサポート、両方に力を入れてきました。2024年4月からは「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」(女性支援新法)が施行され、より女性のニーズに寄り添った支援が必要とされています。若草プロジェクト理事の村木太郎さんに、いま女性たちが直面している困難は何なのか、そしてどんな支援が必要なのか、聞きました。

LINEで相談受け付け、リアルの「保健室」も

村木太郎さん

――若草プロジェクトは故瀬戸内寂聴さんの提案に応えるかたちで、元厚労事務次官の村木厚子さん、弁護士の大谷恭子さんらが呼びかけ人となり2016年に設立されました。困りごとのある女性たちに、どんな支援をしていますか。

私たちの支援には「つなぐ、まなぶ、ひろめる」という三つの柱があります。「まなぶ」は、私たち自身がいま社会で起きていることについて学ぶこと、「ひろめる」はマスコミを通じてだったり、シンポジウムを開いたりして女性たちの状況を知ってもらうということです。
大事なのは最初の「つなぐ」です。つなぐ活動も二つあります。一つ目は女性たちの支援を私たちが直接やっていくこと。そして二つ目は支援してくれる企業と、女性たちや女性支援施設をつなげていくことです。これは間接支援と呼んでいます。

女性たちの支援は相談活動がまずありますが、直接相談所まで行って相談するというのはとてもハードルが高いですよね。電話もしづらい。なので、まずはLINEで相談してもらうことにしています。相談には若い女性が多いので、最初に話を聞くのは彼女たちと同世代で研修を受けた大学生などです。法律や制度のことにも答えられるよう、弁護士や社会福祉士など専門家も後ろに控えています。最初に話を聞くのは、なるべく相談者と同世代にしています。

リアルでの相談では、「まちなか保健室」というものをやっています。学校には「ちょっとしんどいな」というときにフラっと行ける保健室がありましたよね。保健の先生に悩みを相談もできた。そんな保健室をめざしました。街中にあって、ホッと一休みできる場所なので、気軽に行ってみてほしいです。お医者さんの相談の日や、ヨガやフラワーアレンジメントの日もあるんですよ。地域の女性たちが自転車で駆けつけて手伝ってくれています。法律の相談の日もあるのですが、若草プロジェクトを応援してくれる人たちには弁護士も多いので、制度や法律面で手厚く相談に乗れるのも特徴です。

それから、家族や恋人からDVを受けるなどして身を隠さなければならない人のためのシェルター「若草ハウス」も運営しています。スマホの使用や行動を制限するなどの厳しい対応は一切しません。どうしても家に帰りたくない、帰れない女性が安心して泊まれる場所になるようにしています。

間接支援では、女性支援をしている企業と、施設や女性たちをうまく結びつける仕組みを作っています。
例えば、企業が女性たちに服や食料を寄付したいとしても、女性たちがいらない物を支援施設宛てに大量に送りつけられても、女性たちも施設も困ってしまいますよね。そこで、期間限定で企業が寄付できる品をサイトに掲載して、その中から女性たちが施設職員と一緒に画面を見ながら欲しい物を自由に選んでクリックできるようにしました。ただ支援を受けるのではなく、自分が必要な物を選べる方がうれしいですよね。

みんなでサポート、シェルターから大学進学した女性も

――いま女性たちが抱えている大変さには、どんなものがあるのでしょうか。

人によって困りごとはさまざまです。ただ、共通しているのは自己肯定感の低さです。
「私なんか生きていてもしょうがない」
「自分に自信がない」
「どうせ私なんか」
このように感じている人が、とても多いです。これは、本人の責任ではないと僕は思います。その人がそれまで受けてきた扱いや、環境が影響しているのだと思います。

予期せぬ妊娠や出産をしたことがある、仕事の上で男女格差があり生活が苦しいなど女性特有の問題に加え、性被害に遭った経験がある、子どものころに虐待やネグレクトを受けていた、健康に問題を抱えている、など、本当にいろいろな困難がからみあっています。

自信の無さ、自己肯定感の低さから「自分は支援を受ける価値がない」「サポートを受けるほど自分はひどくない」と感じている人も多いです。「そんなことはないよ、自分を大切にして」 そう言いたいです。

ある女性の話をします。シェルターに身を寄せていたのですが、大学に行きたいと希望していました。そこでスタッフみんなで家庭教師チームをつくって勉強を教え、サポートしました。進学費用は、制度を使ったり親を説得したりして手配しました。いま、彼女は大学で福祉の勉強をがんばっています。
あなたには幸せに生きる権利がある。勇気を持って一歩、相談へと踏み出してほしい。
いま苦しい思いをしているすべての人に、そう伝えたいですね。

いまここに、たどり着いてくれたあなたの勇気に寄り添い、支援する味方が必ずいます。
あなたの力に、きっとなれるはずです。

※この記事は朝日新聞社が運営しているウェブメディア「telling,」の掲載記事を再編集しました。

<プロフィール>
むらき・たろう/1978年、労働省(現厚生労働省)入省、東京労働局長、大臣官房総括審議官などを歴任。2016年より一般社団法人若草プロジェクト理事。

お悩み・相談先リスト

「こんなことも悩みなのかな?」と思ったら、
お悩みやご相談の例をご確認ください。
悩みや困難の
背景や理由は様々です。
一人で抱え込まなくても大丈夫です。

  • 妊娠・出産
  • ひとり親
  • 性的な被害
  • DV
  • ストーカー
  • こころの不調
  • 依存症
  • その他
お悩み・相談先リストを見る

各地域の支援窓口を探す

電話からの相談や、お住まいの自治体窓口に
直接ご相談いただくこともできます

※該当する市町村がない場合、
お住まいの各都道府県の窓口をご利用ください

電話で相談する

#8778 はなそうなやみに電話する

お住まいの地域から探す

検索

その他のコラム・インタビューを読む

DV、生活困窮、生きづらさ……あなたの悩みを聞かせて 自治体で広がる新しい女性支援のカタチ

DVや生活困窮、賃金格差などで弱い立場に追い込まれ、生きづらさを感じる女性たちは少なくありません。そんな声に耳を傾け、よりニーズに合った支援をしようと、2024年4月から「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」(女性支援新法)が始まりました。全国には、早くからこうした女性たちの幅広い悩みに対応してきた自治体もあり、「新法をきっかけにより多くの女性に窓口があることを知ってもらいたい」と担当者らは呼びかけています。

行くあてのない少女たちに寄り添い支える「彼女たちは昔の私」。裸足で逃げたわたしの物語

夜の街をあてもなくさまよい、ときに性産業や闇バイトにからめとられてしまう女性たち。かつて自分も同じ経験をしてきた女性(24)は、「親から虐待を受けるなどして家に居場所がなく、街にいる女の子も多い。まだ若い彼女たちは被害者です」といいます。両親からの虐待から逃れて夜の街の住人になり、いまは同じ境遇の女性たちを支援する立場にいる女性に、彼女たちと重なる昔の自分のことを話してもらいました。

困難な問題とは?

女性は、妊娠・出産といった特有の事情や、体格差などにより性被害を受けやすいといった実情があるなど、さまざまな困難な問題に直面することが多いと言われています。「社会における男女格差や、根強い性別役割分業意識もある」とも、専門家は指摘しています。

コラム・インタビュー一覧をみる