行くあてのない少女たちに寄り添い支える「彼女たちは昔の私」。裸足で逃げたわたしの物語

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夜の街をあてもなくさまよい、ときに性産業や闇バイトにからめとられてしまう女性たち。かつて自分も同じ経験をしてきた女性(24)は、「親から虐待を受けるなどして家に居場所がなく、街にいる女の子も多い。まだ若い彼女たちは被害者です」といいます。両親からの虐待から逃れて夜の街の住人になり、いまは同じ境遇の女性たちを支援する立場にいる女性に、彼女たちと重なる昔の自分のことを話してもらいました。

外から見たら普通の家族。でも、居場所がなかった

※写真はイメージです

勤め人の父と、専業主婦の母、子ども2人の4人家族でした。毎日のように習い事をして、一見、恵まれた環境に生まれた子に見えていたと思います。

でも、それは世間体やみえのため。家の中ではあらゆる虐待を受けていました。

母親はきょうだいには食事を用意し、欲しがるものを買い与えるけれど、私には食事も物も与えない。ある日体調が悪くなり、母親に「病院に行きたい」と訴えたところ、電話帳と固定電話を投げつけられて言われました。「自分で病院を探しな。お前に保険証は渡さないから、診てくれるところはないけれど」って。

父親からは身体的な暴力と、性暴力を受けていました。何かにつけおなかや足などを殴られ、10代になっても一緒にお風呂に入ることを強いられました。中学生になって自室が与えられると、夜中に父親が部屋に来るようになりました。

私、両親の名前を知らなかったんです。信じられないかもしれませんが、父親は母親を「お前」としか呼ばないし、母親は父親に一切話しかけなかったので。両親の名前を教えてもらうようなコミュニケーションもないですし。何度目かの家出で捜索願を出されて警察に保護されたとき、「親御さんの名前を書いて」と言われて「わかりません」と言ったら、「そんなはずないだろう」って、言われましたね。

学校でも「ブス」とか「不細工」とか言われていじめられて居場所もなく。でも、逃げ場のない家よりも、限られた時間いればいい学校のほうがまだましでしたね。

外から見たら普通の家でも、なかは暴力とネグレクトの嵐で、安心できる場所ではありませんでした。きっと、私以外にもこういう境遇の子はいるんじゃないかと思います。

裸足で2階から飛び降りて逃亡、夜の街は「おかえり」と言ってくれた

初めて家を飛び出したのは中学生のときです。その日も家中父に追いかけ回されて殴られて。「このままじゃ殺される」と思い、裸足にパジャマ姿で2階のベランダから飛び降りたんです。逃げ込んだコンビニでうずくまっていたら、店員さんが声をかけてくれて警察が来て。でも、結局家に戻されたので、また同じことの繰り返しです。そうやって何度も虐待を受け、家出して……そのうち家に帰ることが減っていき、夜の街に吸い込まれていきました。

高校もおとなに辞めさせられ、居場所は夜の街にしかありませんでした。生きていくために。そのとき声をかけてくれたのは性を買う男性だけでした。買春されて得たお金を、私を管理していたホストのところにすべて持っていくんです。家にいたころは一度も言われたことのなかった「おかえり」という言葉を言ってもらえるのがうれしくて、その言葉をもらうために、毎日がんばっていました。こういう生活をずっと続けていくんだ、そう思っていました。

支援される側から、支える側へ。きっかけは親友の死

未来のない生活から抜け出したきっかけは、親友の死です。彼女も私と同じように性を搾取され、身分証も取り上げられ、がんじがらめにされながらもがいていました。

ホストに貢ぎ、風俗で働き……そして自死しました。ショックで、つらくて……。私も後を追おうとしたけれど、死にきれなかった。

一命をとりとめ、目が覚めたとき、「新しい人生を生きよう」と思いました。そのとき以来、本名ではない名前を名乗っています。生まれ変わったんです。

いま私は、NPO法人の職員として、夜の街で女の子たちに声をかけています。夜の街にはスカウトや買春者など性的搾取をする人たちがたくさんいるから、私たちのような存在が必要なのです。女の子が望んだ時には必要な支援に繋いだり、安全な居場所を用意したりしています。メディアに向けて現状を発信することもしています。

私が支援してもらう団体とつながったきっかけはささいなことでした。スマホを見ていたら支援団体のSNSを見つけて。困っている女の子にご飯を食べさせてくれるとあったので、食事目当てで連絡したんです。そうしたら団体の代表者がとても親身になって話を聞いてくれて、信頼できる人なんじゃないかと感じました。

女の子たちも、私みたいに気軽な感じでいいので、女性をサポートする人たちに声をかけてほしいです。もちろん、「合わないな」って感じる団体もあると思います。そうしたら離れて、また別の団体を頼ってみてください。そうしているうちに、自分にしっくりくる人たちと出会えると思います。幸い、いま困っている女の子たちを支援する団体はいくつもありますから。

4月には、「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」(女性支援新法)が施行されました。やっぱり、法律って一番強いじゃないですか。この法律ができたのは、いままでがんばって女性支援をしてきた先輩たちのおかげだと思います。私もその背中を追って、活動を続けていきたいと思います。

あなたに伝えたい「どうか生きて」

去年、がんばって勉強して高卒認定資格を取りました。もともと勉強は大好きだったので、諦めたくなくて。昔の私がいまの私を見たら、ビックリするんじゃないかな。

親に対する気持ちも変わりました。いま思うと、母は孤独な子育てでうつ気味でした。母なりにつらかったんだろうなと思います。父は、祖父母との関わり方を思い出すと、彼も私と同じように虐待を受けていたのではないかと感じています。そういう意味では、両親もまた、支援が必要な人たちだったのではないでしょうか。

だから、いま、居場所がなくてつらくて苦しい思いをしている女の子たちには「いつか絶対状況は変わるから、どうか今日を生き延びてほしい」と言いたいです。

社会は意外と冷たくないから、あなたを肯定し受け入れてくれる人は必ずいるから。とにかく、生きてほしい。そう思って、今日も夜の街を歩きます。女の子たちに会うために。

いまここに、たどり着いてくれたあなたの勇気に寄り添い支援する味方が必ずいます。
あなたの力に、きっとなれるはずです。

※この記事は朝日新聞社が運営しているウェブメディア「telling,」の掲載記事を再編集しました。

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