「民間団体くにたち夢ファームJikkaへのインタビュー」~日々の支援について~

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困っていることがあっても、どこに相談すればいいのかわからない、どのような支援団体があるのかわからない、といった悩みを抱えている方も多いかと思います。この記事を読んで、民間支援団体を見つける手助けになれば幸いです。

くにたち夢ファームJikka(以降「Jikka」)は、2015年から、東京都国立市で、DVや虐待被害、生活困窮、精神障がいなど、さまざまな困難を抱える女性たちに、シェルター、コミュニティ、居住の場を提供し、女性が主体的に生きていくための支援を行っています。今回は、Jikkaの取り組みについてJikka責任者の遠藤良子氏にインタビューを行いました。

Jikkaについて教えてください。
Jikkaは、地域の中で困難を抱える女性たちを支援するためのNPO法人で、相談支援事業、居場所事業などを行っています。Jikkaの運営は、理事と運営スタッフ、そしてボランティアによって支えられており、地域の皆様とも密接に関わりながら活動しています。
運営スタッフは8名おり、月曜日から金曜日までシフトを組み2~3名のスタッフが当番として入ります。運営スタッフは、日々の支援業務のほかに、月に2回の会議で日々の支援内容の共有やケース検討などを行っています。
また、Jikkaは、利用者、元利用者、地域の市民の方々などのボランティアによっても支えられています。近隣の方々も気軽に訪れ、地域との交流もできる、ひらいた支援の場を実現できていると考えています。
どのような相談者が多いのでしょうか。
女性として生きる中で、困難を抱えている人なら誰でも受け入れています。DV被害や生活困窮についての相談者が多いですが、
そうした方々は、「自分には能力がない」と考えていたり、「自分は女性として劣っている」と思い込まされていることが少なくありません。たとえば、生活保護を受けた方がいいのに、「受けたくない」と思っていたり、生活保護を受けていてもそのことを周囲には隠したいと思っていることもあります。
そういった相談者が多い中で、その人本人がどうしたいのか、何が嫌なのかをきちんとヒアリングすることが重要です。本人の中にある隠された主訴をいかに理解し、本人がなぜ支援を求めてきたのかを把握することを意識しています。
支援において大切にしていることを教えてください。
とくにDV被害者支援において大事にしているのは、当事者が自立して主体的に生きられるようにすることです。そのためには従来のすべてを秘匿するような支援ではなく、周囲に知ってもらいながら、地域として支えていくための「ひらいた」支援が重要だと考えています。当初は、このような「ひらいた」支援について、自治体から「危ないのではないか」と言われたこともありましたが、次第にこちらの考えに理解を示してくれるようになりました。
これまで加害者男性がJikkaに乗り込んできたことはありません。リスクはありますが、リスクにおびえるのではなく、地域で支える体制を作ることが大事だと考えています。実際、自治体の職員が頻繁に出入りしたり、近隣の人が来訪してくれたりすることで、地域で支えるということが実践できていると考えています。

Jikkaの支援は、行政のように、支援メニューがあらかじめ決まっているわけではなく、相談者がどうしたいかに応じて支援計画を決めていきます。相談に来てくださった方が、何に困っているか、これからどうしたいかをまずは受け止めて、それをどうやって実現していくかを一緒に考えることを大事にしています。
具体的にどのような支援を行っているか教えてください。
Jikkaでは、相談を窓口に、その後の自立のための支援を、相談者のニーズに応じて臨機応変に、かつ長期的に、提供しています。例えば、緊急一時避難のためのシェルター提供、役所・病院・警察・裁判所などへの同行、長期的な居住支援、食料支援や生活支援など、多岐にわたる支援を実施しています。

【相談対応】
自立し、主体的に生きていくための相談支援を行っています。

【一時避難のためのシェルター提供】
緊急一時避難を目的としたシェルターを提供しています。期間は、相談者のニーズに応じて、長期になることもあります。

【居住支援】
地域での自立を目指す方のためのステップハウスを運営しています。UR都市機構と提携し、住まいの確保に困っている当事者への居住支援も2022年から開始しました。

【自立に向けた支援(同行支援や生活支援など)】
居場所の提供だけでなく、自立に向けた支援を幅広く担っています。相談者のニーズを踏まえ、転居に関する支援や、役所の窓口・病院・裁判所などへの同行支援、家事・育児・金銭管理などの生活支援を提供しています。

【食に関する支援】
地域の社会福祉協議会や生協の協力を受け、食の支援も行っています。食は命の源であるという観点から、利用者への食事提供のほか、月に2回、フードパントリーなどを行っています。

【その他】
女性支援に関する講演やSNS発信など、広報啓発活動も行っています。

Jikkaの設立背景や特に大事にしていることについて教えてください。
もともと私は、行政で女性相談員として働いていましたその中で、行政としての支援の限界を感じるようになり、シェルター、居場所などの女性支援団体を立ち上げたいと考えたのがきっかけです。

初めは、一時保護のためのシェルターをと考えていましたが、それで解決するようなケースは少ないということに気づきました。精神障がいがある人、生活困窮の人、シングルマザーでお子さんがいる人など、さまざまな困難を抱える女性たちから相談があり、シェルターを提供しても、その後の行き先がないことが多かったのです。また、公的な支援だけでは十分な支援ができないということで、行政からの問い合わせも次第に増え、緊急一時保護以外の長期的な支援の必要性があると感じました。

たとえば、高齢者でもない、子どももいない、障がい者でもない、といった女性は、たとえ生活困窮などの困難を抱えていたとしても、役所で相談できる窓口がないことがほとんどで、公的な支援からこぼれ落ちてしまいます。Jikkaは、こうした女性たちに対し、長期的な支援をしている状況です。もともとは主に「DV被害者のためのシェルター」だったはずが、相談者からのニーズを踏まえ、提供する支援内容が変わってきました。「当事者中心主義」の実践をしてきたということです。

とくにDV被害者支援において大事にしているのは、当事者が自立して主体的に生きられるようにすることです。そのためには従来のすべてを秘匿するような支援ではなく、周囲に知ってもらいながら、地域として支えていくための「ひらいた」支援が重要だと考えています。当初は、このような「ひらいた」支援について、自治体から「危ないのではないか」と言われたこともありましたが、次第にこちらの考えに理解を示してくれるようになりました。

これまで加害者男性がJikkaに乗り込んできたようなことはありません。リスクはありますが、リスクにおびえるのではなく、地域で支える体制を作ることが大事だと考えています。実際、自治体の職員が頻繁に出入りしたり、近隣の人が来訪してくれたりすることで、地域で支えるということが実践できていると考えています。
相談を悩んでいる方に向けたメッセージはありますか。
とにかく、相談してもいいか悩まないでほしいです。悩む前に相談してほしい。悩みそうになったら相談してほしい。こんなことを聞いてはいけないのではと思わず、困ったら誰かに話し聞いてもらってほしいです。自分に起こったことを恥じないでほしい。自分の中に閉じ込めないでほしいと思います。

こんなことを相談していいのだろうか?と考える必要はありません。相談するかどうかを悩むくらいだったら、まずは相談してみましょう。自分に起こったことを恥じないでほしい。自分の中に抱え込んでしまわずに、だれかに話を聴いてもらいましょう。

今回はくにたち夢ファームJikkaの皆さんに、お忙しいところインタビューをさせていただきました。あなたの地域にも相談できる窓口はあります。ぜひ「支援窓口を探す(https://anata-no-mikata.mhlw.go.jp/search/)」から検索してみてください。

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